第3編 物質とイオン

第2章 電気分解と電池のしくみ

1電気分解

2電池のしくみ

 

 電気分解

【イオンからなる物質の電離】

 物質が水に溶解すると,物質を構成する粒子はばらばらになり,水分子とともに均一に分散する。イオンからなる物質は水に溶けると,構成する陽イオンと陰イオンがばらばらに分かれる。これを〔 電離 〕という。電離はイオン結合の逆を考えればよい。また,水に溶けて電離する物質を〔 電解質 〕という。

 
 

【電解質水溶液の電気分解】

 電解質の溶液は,溶液中に+(陽イオン)と-(陰イオン)が存在するので,電極を入れ電池につなぐと〔 電流 〕が流れる。電流は〔 電子 〕の流れで+極からー極へ流れると定義されている(決められている)。しかし,実際,電子はー極から+極へ流れている(電子はーの粒子だから)。これは電流が流れる現象(導電現象)の方が先に確認され,その向きを+から-と定義し,その後に電子の詳細が分かったため逆になってしまっている。

電解質溶液に電流を流すと,溶液中の〔 陽イオン 〕は陰極(-極)に引き寄せられ,電池から流れてきた電子を〔 受け取る 〕。また,溶液中の〔 陰イオン 〕は陽極(+極)に引き寄せられ,電子を〔 放出 〕する。例えば,塩化銅()CuCl2の水溶液に電極を入れ電気を流すと,次のようになる。

 CuCl2は水に溶けると〔 Cu2 〕と〔 Cl 〕2つに電離する。この溶液に電極を入れ電流を流すと,Cu2は〔 陰極 〕へ,2つのClは〔 陽極 〕へ引き寄せられる。そこでCu2は電子を受け取り〔 Cu 〕に,Cl2つで電子を放出し,〔 Cl2 〕となる。つまり,CuCl2は電流によってCuCl2に分解されたことになる。このように,電流によって電解質が分解される反応を〔 電気分解 〕という。

 
 

例題 次の文を読んで後の問いに答えよ。

 アルミニウムAlは,酸化アルミニウムを主成分とする鉱物である(ア)を原料にして製造される。(ア)からとり出した酸化アルミニウムを電気分解するとアルミニウムが得られるが,酸化アルミニウムは,水には溶けにくいため,水溶液にして電気分解することができない。そこで,酸化アルミニウムに1000℃以上の熱を加え(イ)させて液体とし,これを炭素電極を用いて電気分解することで得られる。

 

(1) 文中の空欄に入る語句を答えよ。

(2) 酸化アルミニウムを化学式で示せ。

(3) 炭素は非金属であるが,電極として用いることができるのはなぜか述べよ。

(4) 酸化アルミニウムを炭素電極を用いて電気分解したとき,アルミニウムは陰極,陽極のどちらに生成するか。また,反対の極から生成するものは何と考えられるか。

(5) アルミニウムは本文のような方法で製造されるが,使用済みのアルミニウム製品のリサイクルによって得られる割合が多い。その理由を考えよ。

 

(1) () ボーキサイト  () 融解  (2) Al2O3  (3) 炭素は電気を通すから。

(4) アルミニウム:陰極  陽極から二酸化炭素(酸素が発生するが,電極(炭素)と反応する)

(5) この方法は高温を必要とする電気分解で,多くのエネルギーを必要とするのでコストがかかる。また,環境にもリサイクルの方が望ましいから。